リブマーク
銀河鉄道の夜




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ジョバンニ、カムパネルラが川へ入ったよ。

ジョバンニ
どうして、いつ。


ザネリがね、舟の上から烏うりのあかりを水の流れる方へ押してやろうとしたんだ。そのとき舟が揺れて水へ落っこちた。そしたらカムパネルラがすぐ飛びこんだんだ。それでザネリを舟の方へ押してよこした。ザネリは船につかまった。でも、あとカムパネルラが見えないんだ。

ジョバンニ
みんな捜してるんだろう。


そうだよ、すぐみんな来たんだ。カムパネルラのお父さんも来た。けど、まだ見つからないんだ。

ジョバンニ
ザネリはどうしたの。


ザネリはうちへ連れられてった。


そこに影たちに囲まれて、カムパネルラのお父さんが、黒い服を着てまっすぐに立って、右手に時計を持って、じっと見つめている


影たち
(口々に)カンパネルラ・・・・・・カンパネルラ。


影たちは思い思いにカンパネルラを探す


ジョバンニ
あっ、カンパネルラのお父さん。

カンパネルラの父
(時計を見ている)落ちてから四十五分。もう駄目だな。

ジョバンニ
おじさん、ぼくね、・・・・ぼく、カムパネルラの・・(行った方を知ってます。ぼくはカムパネルラといっしょに歩いていたんです)

カンパネルラの父
君はジョバンニ君。今晩はどうもありがとう。カンパネルラとはいつも一緒にいてくれたんだね。

ジョバンニ
・・・・・・

カンパネルラの父
そうだ、あしたの放課後みんなと家へ遊びに来てくれないかな。


ジョバンニは何も言えずただおじぎをする
カンパネルラのお父さんはまた、川下の銀河のいっぱいにうつった方へ、じっと眼を送る